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日本製鉄の対電炉投資に関するTransition Asiaの立場

Transition Asiaは2025年5月30日、総額8,687億円をかけて電炉(EAF)を増強する投資を行うとした日本製鉄の発表を歓迎する。当該投資は、

 

  • 九州製鉄所(八幡地区)に年産能力200万トンのEAFを新設すること
  • 瀬戸内製鉄所(広畑地区)にEAF1基を増設、年産能力を50万トン増強すること
  • 山口製鉄所(周南)に保有するEAFの改造・再稼働により年産能力を40万トン増強すること

 

を含む。

 

Transition Asiaの分析では、EAFをベースとする鉄鋼生産プロセスの温室効果ガス(GHG)排出量は、既に従来の高炉(BF)プロセスの排出量に比してきわめて低いことが示されている。また、EAFを駆動する電力を再生可能エネルギー(再エネ)100%に切り替えることができれば、EAFの排出量はさらに削減できる(下図参照)。したがって、今回の投資によるGHG削減インパクトを測定するには、特に投資の対象となったEAFの電源、投入する原料に占めるスクラップやホットブリケットアイアン(HBI)の割合といった、排出削減に大きな影響を与える要因に関する情報開示も必要となる。例えば以下に示すように、EAFのGHG排出量はどのようなソリューションを採用するかによって大きく変動する。

図:各技術の生産量1トンあたり排出係数

 

出典: Transition Asiaによる分析

 

Transition Asiaは、当該投資のポジティブなポテンシャルを最大限に活用するため、日本製鉄が再エネの調達や低炭素原料の投入に関する計画を策定・公表することを期待する。

 

最後に、一連の投資について、日本製鉄は政府の「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業(事業Ⅰ(鉄鋼)) 令和7年度~令和11年度事業」を通じた手厚い支援が明確なきっかけとなった旨、プレスリリースで言及した。EAF鉄鋼メーカーに加え、BFを事業の主とするBF鉄鋼メーカーにもインセンティブを提供する政府支援の重要性は、どれほど強調してもしすぎることはない。こうしたインセンティブはBF設備の休廃止やEAFへの転換だけでなく、既存EAFの増強にも与えられることが望ましい。

データと免責事項

この分析は、情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスを行うものではなく、投資判断の根拠となるものでもない。この報告書は、評価対象企業が自己申告した公開情報に対する執筆者の見解と解釈を表したものである。企業の報告については参考文献を掲載しているが、執筆者はそれらの企業が提供する公開の自己申告情報を検証することはしなかった。従って、執筆者は本報告書におけるすべての情報の事実の正確性を保証するものではない。執筆者および Transition Asiaは、本報告書に関連して第三者が使用または公表した情報に関して、いかなる責任も負わないことを明示する。